とぎぷろべい

包丁研ぎとプログラミングと米国株投資についてのなんやかんや

包丁屋さんから聞いた包丁のお話

先日、ヤフオクで無名の舟行包丁(片刃・165mm)を買いました。

しかしこの包丁、きれいに裏を研ぐことができません。

 

「片刃の包丁で裏がきれいに砥げないってどういうことだよ」と思いまして、これは自分の研ぎ方に問題があるのか、それとも包丁自体に問題があるのかを確定させるために、近所にある包丁屋さんにお話を聞きに行ってきました。

 

 

〇こんな粗悪な包丁は見たことがない

お店に行って、お買い物を済ませてから店主さんに件の舟行包丁を見てもらうと、「こんなひどい包丁は見たことがない」と言われましたw

 

まずは画像をご確認ください。

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峰ががっつり曲がっています。

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刃も歪んでいるのが確認できます。

 

はい。この包丁は、縦方向にかなり歪みがあります。

なので刃が砥石に平行に接触してくれないので、裏をまっすぐに砥ぐことができないんですね。

これはもう完全な不良品です。

 

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表はきれい。

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裏はひどい。切っ先部分の裏打ちが存在しない。

 

曲がっている包丁なので、平らな砥石で研いでもこのようにきれいに砥ぐことはできません。

というか、切っ先の部分に裏打ちがないのが画像からも確認できます。

ここまでくるともう商品未満としか言えないのかもしれませんね…。

 

 

閑話休題

 

さてこの舟行包丁が粗悪品なのはよく分かったのですが、そこから派生して包丁に関係するおもしろいお話がたくさん聞けたので、忘れないようにここに書いておきたいと思います。

 

 

〇銘のない包丁はやばい?

銘のない包丁は買うべきではないようです。

銘があるということは、その包丁に販売店なり製造元なりがその包丁に責任を持っているということの証なのだそうです。

 

その証を付けずに売っているということは…その時点でもう品質はお察しですよね。

無銘の包丁は絶対に買ってはいけない、ということでした。

 

 

〇堺刃物と堺打刃物のちがい

堺製の包丁には、堺刃物と堺打刃物という2つの分類があることをご存じでしょうか?

この2つは同じ堺ブランドでもまったくの別物らしいです。

 

上で紹介したひどい舟行包丁は堺刃物です。

その証拠に包丁の柄に ↓ のようなシールが貼られていました。

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堺刃物を証明するシールです。

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こんな商品未満の粗悪な包丁でも高級らしいです。

 

このシール、なんとですね、堺で作った包丁以外にでも普通に貼ることができるらしいのです。

包丁屋さんが言うには、上記のだめ舟行包丁はおそらく土佐かどこかの新米の鍛冶師が作ったものであり、それを商売人が二束三文で買って堺にもってきて堺の砥ぎ師に安く形を整えてもらったものであろう、ということでした。

 

つまりですね、↑ のシールは堺の鍛冶屋が作った包丁以外にでも、堺にもってきてちょっと加工をしさえすれば、普通に貼ることができるんですね。

包丁屋さんが言うには、ただ組合に加入してさえれば、このシールは簡単に手に入れることができるようです。

 

これが、堺刃物の正体らしいです。

なんか…いやな話ですね。

まるで北朝鮮産の海産物を国産と表示して販売したり、なんの変哲もない普通の豚肉を三元豚ブランドで売り出すような小賢しさを感じてしまいます。

 

 

堺打刃物は、これとは別のシールが貼られています。

ちょっとシールの画像がないのですが、この堺打刃物限定のシールは1枚1枚に違う数字のロット番号が印字されています。

このロット番号で問い合わせれば、誰が作った包丁かが確認できるというのですから、すさまじい品質への自信を感じます。

 

この堺打刃物シールは、鍛接から手作業で作っている本物の打刃物の包丁にしか貼ることが許されないらしいです。

なので、たぶん利器材を鍛造した包丁ではこのシールは貼れないのだと思います。

 

この部分はちょっと確証がないのですが、とにかく堺打刃物は堺刃物とはまったく違う、本物の堺ブランドの包丁であると言えるらしいです。

堺の包丁を買うときは、ちょっとお値段が上がったとしても、ぜひ銘ありの堺打刃物シールが貼ってある本物の包丁を購入されることをお勧めします。

 

 

〇白二鋼と安来白二鋼のちがい

私はステンレス系の鋼材よりも、安来鋼の白紙クラスで作った包丁が大好きです。

だから包丁を買うときは、「白鋼」だとか「白二鋼」という文字があるかどうかをチェックしています。

 

しかしですね、なんとこの白鋼とか白二鋼という言葉、必ずしも安来鋼の白紙2号のことを意味しているわけではないようです。

どういうことかというと、安来鋼は日立さんが製造販売している製品ですが、日立以外が製造販売している刃物用炭素鋼の製品名に、白鋼だとか白紙だとか白二鋼などというまぎらわしい名称が使われているらしいのです。

 

なので、偽装表示をしている場合はどうしようもないですが、包丁の材質に「白鋼」とか「白二鋼」と書いているからといって、その包丁の材質が安来鋼の白紙2号なのかどうかを判別することは不可能らしいです。

というか、たぶん安来鋼なら安来鋼と書いているはずですから、安来と書いてない時点でこれもお察しなのでしょうね。

 

これと同様のまるで詐欺のような売り方が、白鋼だけでなく青鋼でもふつうになされているようです。

なんというか、こんな詐欺まがいの売り方しかできないなんて、安来鋼の包丁好きとしては本当に悲しいです。

 

 

〇両刃の刺身包丁のメリットは何?

和包丁には柳刃と呼ばれる薄くて長いお刺身専用の包丁があります。

この包丁、当たり前ですが通常は片刃の包丁です。

なぜかというと、そもそも魚をさばくのに両刃の包丁がまったく適していないからです。

 

お刺身になるとその傾向が顕著で、両刃の包丁で冊を切ると、魚の切り身が包丁の側面に引っ付いてきれいに切ることができません。

片刃だとこれがすら~っときれいに切れるのですね。

とってもおもしろいなと思います。

 

しかしですね、ちょっと検索とかしてもらうと分かると思うのですが、世の中には両刃のお刺身包丁という商品がけっこう存在しています。

これが不思議でしょうがなかったので「なぜ両刃のお刺身包丁が存在するのか」を包丁屋さんに聞いてみたのですが、その回答は「わからない」というものでした。

 

包丁屋さんが言うには、やっぱりお刺身包丁は片刃であるべきらしいです。

まあ当たり前ですよね。

片刃は魚をさばくためにある刃の形状なのですから。

 

「両刃のお刺身包丁で冊を切るんだったら牛刀で冊を切るのとたいして変わらないですよね」的なことを言ってみたのですが、包丁のプロに「ほんとそうだよね」と回答されてびっくりしました。

 

包丁屋さんが言うには、おそらく両刃の包丁は土佐自由鍛造の人たちが作っているのではなかろうか、ということでした。

土佐の包丁って、出刃でもなんでもそうですが両刃が多いんですよね。

 

まあ製造元が土佐だろうと堺だろうとユーザーとしてはどっちでもいいのですが、包丁屋さんから見ても両刃のお刺身包丁は何のために存在しているのかよく分からない不思議な商品らしいです。

もしお刺身包丁を買うのなら、ぜひ片刃の包丁を買ってください。

 

 

〇アジ切り包丁と小出刃包丁はちがうもの?

当方、アジ切り包丁と小出刃包丁を同じものだと思い込んでおりました。

しかし包丁屋さんが言うには、この2つは明確に違うものだということでした。

 

小出刃包丁は、その名のとおり本出刃包丁を短くしただけのぶっとい包丁です。

べつに小アジをさばくのに使いやすいとかそういった利点は特にないようです。

 

アジ切りは小出刃包丁よりももっと峰が薄い包丁です。

小出刃包丁の峰厚が8mmくらいあるとすれば、アジ切り包丁の峰厚は3mmくらいです。

 

もしアジ切り包丁を買いに行ってお店の人に「小出刃包丁をください」と言ったら、自分が思っていたのとは違うぶっとい包丁が出てくる可能性があります。

ご注意ください。

 

 

〇シャプトンの砥石の面は直せる?

シャプトンの砥石、いいですよね。

 

特に黄色い#1000の砥石。

吸水もいらないし、ぐいぐい砥げるし、硬いから砥面の水平性もあんまり乱れない。

すばらしい砥石だと思います。

 

ただこのセラミック砥石と呼ばれる砥石、私は今の今までずっと「砥面の修正ができない砥石」だと思っていました。

ところが包丁屋さんが言うには、専用の面直し砥石があれば、シャプトンの砥石も面直しができるのだということでした。

 

「そいつはすげえや!」ということでセラミック砥石用の面直し砥石のお値段を聞いてみたのですが、なんとびっくり2万円超ということでした。

最高級の天然仕上げ砥石が買えそうなお値段ですね。

 

ちなみに、セラミック砥石を製造販売している会社はいろいろあるようですが、包丁屋さんが言うにはセラミック砥石ならシャプトンさんの製品一択らしいです。

なのでもしセラミック砥石の購入を考えている方は、たぶんシャプトンさんの「刃の黒幕」とかを買うのがいいんじゃないかと思います。

 

 

以上です。